漢方薬や鍼灸治療に関する豆知識を中心に、皆様のお役に立つてるような
話題をコラムにてお伝えしていきたいと思っております。
養生をどうしますか?
産まれたときはガソリン満タンですが、年齢とともに減っていき、40歳で残り半分というところでしょうか。残りの人生、さて、今までのように走りますか? エコランにしますか?
そのエコランが、養生に相当するかと思います。東洋医学の養生は、『千金要方』という本に書かれています。唐代の王?(おうとう)という人がまとめた本で、医学に養生を位置づけた医書です。最近になって、アンチエイジング、予防医学ということが叫ばれ始めていますが、今をさかのぼること1400年以上も前に、東洋医学では養生についての一定の見解を持っていたことになります。びっくりしませんか?
『千金要方』巻27に、次のような記述があります。
「40歳までは、自由気ままでも良かったが、40歳を超えたら、にわかに気力が衰え、いろんな病気ができ、それが慢性化してなおらなくなったりする。」
残り半分になったときに、始めて残量が気になりだします。残り少ないな、って。日本人の平均寿命でいえば、折り返し地点が40歳ということになりますが、偶然にも『千金要方』が言っている年齢と同じでした。
身体はすこしづつ衰えはじめ、病気にもなりやすくなります。それを未然に防ぐためには、養生は欠かせません。
養生は、エコランの養生とパワーアップの養生とに大別できます。
エコランの養生は、無駄に減らさない、徐々に減るようにと工夫する、消極的な養生です。老化をみとめ、健康で、病気にならないように、上手に年老いていくのを期待します。東洋医学の養生はこれに属すでしょう。
パワーアップの養生は、栄養をとれば元気が益し、秘密の薬をのめば若返り、鍛えれば強くなるというふうに考える、積極的な養生です。老化はみとめません。何とかして克服しようとします。シミ、シワはもちろん敵です。アンチエイジングはこれに属します。さらに汗をかいて、激しくスポーツし、パワーダウンしないように努力します。
さて、どちらがお好みですか。
東洋医学的には、身体を心臓に負担をかけずに、全ての関節、筋肉に油をそそぐようにまんべんなく動かします。古代、それを導引と称していました。2000年以上も前から、導引は行われていました。現在の太極拳、気功、ヨガなどは、導引の子孫でしょう。
運動不足と思っているみなさん、何も汗を流すだけが運動ではありませんよ。静かに、ゆっくり動くことも運動です。そして、ゆるやかに老化する。そういう選択肢もありますよ。