鶯谷書院

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江戸教科書シリーズ収録

『鍼灸抜粋』

メモ

喜運院之芮(きうんいん・しぜい)編
3巻5冊
延宝8年(1680)刊
大阪府立図書館森田文庫蔵(208)画像公開はないとおもわれる
「臨床古典全書」(第67巻)所収

著者名については、元々は不明だったが、長野仁がさがし出した。延宝4年(1676)刊本もあるという(『鍼のひびき 灸のぬくもり』)。
森田文庫は、森田幸門の旧蔵書が寄贈された文庫で。
書名に「鍼灸抜萃」がつくものは、いくつかあるが、代表的なもの。
『広益鍼灸抜萃』1巻
元禄9年(1696)刊
『鍼灸抜粋大成』3巻
元禄12年(1699)刊

参考

本書は、『鍼灸要歌集』と類似している。
「頭痛」を比べると『鍼灸抜萃』のほうが簡略化されている。
『鍼灸抜萃』が力点を置いているのは「経穴」部分である。これも比べてみると明白である。「歌」部分の有無も大きな違いである。

『鍼灸抜萃』
五 頭痛之論治
頭をいたまするものは一邪なり。風雨の時節をこるを頭風と云。時ならず痛むを頭痛と云。厳用和がいはく、虚して風寒にをかされ、湿陽経につたへて邪かくれ居て、なづきに、のぼり、いたむを、厥頭痛と云。頭のまん中のとをり底に通して甚だいたむを真頭痛と云。これは夕に発て朝に死し、あしたに発て夕に死す。百会 風府 風池 合谷 攅竹

『鍼灸要歌集』
十三、頭痛論并に治法
頭を痛まするものは一邪也。風雨の時節発を頭風と云。時ならず痛むを頭痛と云。厳用和が曰虚して風寒にをかされ、湿陽経につたへて邪かくれ居てなづきにのぼり、痛むを厥頭痛と云。頭のまん中のとをり、底に通じて甚だいたむを真頭痛と云。これは朝に発て夕べに死す。夕に発て朝に死す。頭重く鼻ふさがりて頭痛するには、百会に鍼を刺べき也。目眩頭のかわはれ頭痛するには、前頂に鍼をさすべし。うなじ引つり頭痛して、悪寒するには、後頂に鍼さすべし。
風府、風池、合谷、攅竹に鍼すべし

『鍼灸抜萃』
百会(一名は三陽五会。一名は巓上一名は天満)○前頂の後一寸五分。いただきの中央旋毛の中。豆を容るべし。両の耳のとがりより直ぐ。性理に北溪の陳氏がいはく。畧此に子に退く。猶天の極星の北に居するかごとし。三陽督脈の会○素註に鍼二分。銅人に灸七壮。七々壮に止む。をよそ頭頂に灸すること七壮に過ることを得す。頭頂皮うすきによつて。灸多きによろしからず。鍼二分。気を得て。すなはち瀉す。又素註に刺すこと四部、頭風、中風、言語謇澁、口禁して開かず。偏風半身かなわず。心いきれもだへ。驚悸。健忘して。前をわすれ。後へをうしなふ。心神恍憁として心力なく。痎瘧、脱肛、風癇、青風、心風、角弓、反張、羊鳴、多哭して。語言擇はず。をこるときすなはち死し。吐沫、汗出でてからえづきし飲酒して。面あかく。脳重、鼻ふさがり頭痛目まひ。食するに。あぢわひなきことをつかさどる。百病みな治す。
虢の太子。尸厥して扁鵲三陽五会を取る。しばらくあつて太子よみがへり玉ふ。唐の高宗頭痛す。秦の鳴鶴がいはく。よろしく百会を刺して血を出だすべし。武后ののたまはく。豈至尊の頭上より血を出すの理あらんや。すでにして。これを刺して。微し血を出して立どころに愈ゆ。

『鍼灸要歌集』
百会、一名は三陽五会、一名は巓上天満、前頂の後一寸五分いただきの中央旋毛の中。豆を容るべし。両の耳のとがりより直に上。三陽督脈の会○素註に鍼二分、銅人に灸七壯七々壯に止む。頭頂皮うすきが故に。多によろしからず鍼二分気を得て瀉す。

脳重く頭痛目眩や。胸さわぎ。脱肛出ば。百会成けり
頭風中風。言語渋りて口噤半身なへば。百会成けり
健忘し。前後をわすれ痎瘧や。心力なくは百会成けり
風癇かき。そりかへりては沫を吐百病ともに百会成けり
百会には頭頂の皮のうすきゆへ七壯上は灸をすへざれ
百会とは両方のまゆの正中を直に上へ八寸にあり

目次

鍼灸抜萃目録上
第一 四知之論之事
第二 脈之見様之事
第三 腹之見様之事 (付 生死を知る事)
第四 五蔵之色体之事
第五 天地人男女之法之事
第六 太極之事
第七 鍼灸之慎之事 (付 四季人神・毎日人神・血支日・血忌日・長病日)
第八 艾葉之制法之事
第九 尺寸定法之事 (付 髮際定法之事・大椎定法之事)
第十 鍼入不抜抜様之事
第十一 折入鍼抜様之事
第十二 撚鍼撚様之事
第十三 打鍼之手法之事
第十四 管鍼之手法之事
第十五 砭鍼之事
第十六 補瀉迎隨之事
第十七 阿是之穴之事
第十八 手指之図之事
第十九 鍼之図之事
第二十 臓腑之図説之事
第二十一 骨度之図之事
第二十二 経絡図説病論之事(鍼灸抜萃中)
鍼灸抜萃上目録終

鍼灸抜萃目録下
第一 気之論治
第二 鬱証之論治
第三 中悪之論治
第四 眩暈之論治
第五 頭痛之論治
第六 眼目之論治
第七 耳病之論治
第八 鼻病之論治
第九 唇口之論治
第十 牙歯之論治
第十一 咽喉之論治
第十二 痃癖之論治
第十三 手指之論治
第十四 心痛之論治
第十五 腹痛之論治
第十六 脇痛之論治
第十七 腰痛之論治
第十八 痔之論治
第十九 脱肛之論治
第二十 秘結之論治
第二十一 淋病之論治
第二十二 消渇之論治
第二十三 脚気之論治
第二十四 中風之論治
第二十五 痺之論治
第二十六 痿之論治
第二十七 傷寒之論治
第二十八 霍乱之論治
第二十九 瘧之論治
第三十 泄瀉之論治
第三十一 宿食之論治
第三十二 痢病之論治
第三十三 諸蟲之論治
第三十四 積聚之論治
第三十五 疝気之論治
第三十六 脹満之論治
第三十七 水腫之論治
第三十八 虚損之論治
第三十九 健忘之論治
第四十 癆瘵之論治
第四十一 遺精之論治
第四十二 汗之論治
第四十三 痰飲之論治
第四十四 咳嗽之論治
第四十五 喘急之論治
第四十六 嘔吐噎膈飜胃之論治
第四十七 諸熱之論治
第四十八 黄疸之論治
第四十九 癲癇之論治
第五十 吐血之論治
第五十一 下血之論治
第五十二 溺濁之論治
第五十三 遺溺之論治
第五十四 溺水之論治
第五十五 咳逆之論治
第五十六 小児之論治
鍼灸抜萃下目録終

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