鶯谷書院

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江戸後期Ⅰ収録

『鍼学発矇訓』

メモ

著者:

宮脇仲策(生没年不詳)は養陽子と号し、栄安先生とよばれていた。法橋の官位を持つ導引家である。周防(現在の山口県)に生まれ、若くして京に遊び、医学や儒学を学んだ。

成立:

宝暦12年(1762)写。正徳4年(1714)の田中白圭「鍼学発矇訓序」・宮脇仲策「鍼学発矇訓序」がある。

所蔵:

京大富士川文庫所蔵(シ/482)

参考

著者の系譜:

「当流鍼伝導統」によれば、徐氏から田代三喜(1465~1544)、三喜から田代助心、助心から宮脇海月、海月から宮脇仲策へと伝わった鍼術である。仲策は、さらに経絡蔵象は椎橋紹伴、朝鮮刺法は端倉求安、運気刺法は延命院天真、導引按術は大久保道古から伝授されたという。大久保道古には『古今導引集』の著がある。三喜が入明して学んだ「徐氏」とは、「鍼術ノ元由」には、「聞説此人南宋徐煕字秋夫カ後裔」とあるように、劉宋の徐煕、徐秋夫の末裔のようである。扁鵲・華陀の伝を得て、十二経穴に拘わらず、腹部や背部を刺し、神の如き効験があったという。また「同氏助心」とある人物は、田代三喜は無子ゆえ未詳。

鍼法:

あん摩と鍼を組み合わせた「導引鍼法」という。腹への刺鍼は夢分流の影響があると考えられる。

根本太極鍼は、気海穴を唯一穴として使う。大金鍼を1寸前後刺す。30呼留める。
(気海穴を第一に使うのは、『意仲玄奥』と同じ)
腹根本鍼は、気海穴と、その左1寸5分の腎、右1寸5分の命門、左天枢、下脘を、腹5本鍼という。5、6分刺す。
(御薗意三伝の『鍼法秘伝鈔』の「万病一如鍼之事」では、「八、万病一如の鍼の事 前は臍の両傍一寸五分二穴と、また鳩尾の下にあり。背は十一骨に深く立る。次に十一の両方一寸五分補に立る。百会、心寂かに立る。此法は惣(すべ)ての病に用る。尤膈の病に妙也。五所の妙鍼とも云。去りながら大事也」とある。)
背根本鍼は、命門の高さの脊際(男左女右)、左右の石門(腎の募穴)の上下を、背5本鍼という。

これら基本刺鍼とし、そののち散鍼法によって欝滞を疏通させる。その際、任脈と督脈を特に重視している。

使用鍼:

按鍼:不明。
木鍼:木製の鍼を、木槌で叩く(トークセン)。
石鍼:卵形の石を紙でくるみ、叩く。
大鍼:長さ3.4寸から5、6寸。古鉄で作る。摺り立て状。
中鍼:長さ、2寸~5寸。金銀、真鍮で作る。
微鍼:毫鍼。1寸6分。金で造るのが上。

目次

鍼学発矇訓序
鍼学発矇訓序
鍼術ノ元由
鍼学発矇訓目次
 第一 腹根本大極鍼訓
 第二 腹五本之鍼訓
 第三 扁鵲伝
 第四 散鍼訓
 第五 任脈督脈刺訓
 第六 養生鍼之訓
 第七 痞塞刺訓
 第八 腹痞塊刺訓
 第九 背胸痞滞刺訓 附腰脚刺法
 第十 膏肉結肉刺訓
 第十一 補瀉迎隨訓
 第十二 鍼術習煉訓
 第十三 腰裏膏肉刺訓
 第十四 尾骶骨刺訓
 第十五 食傷腹痛刺
 第十六 頭痛刺訓
 第十七 大小便通訓
 第十八 吉凶弁訓
 第十九 禁鍼訓
 第二十 鍼作訓
当流鍼伝道統

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